癒し&驚き

「癒し」と「驚き」は、長いあいだ相反するものだと思い込んでいた。

少し前に流行ったワード「癒し系」と言えば、柔らかい声色、波風を立てない物腰、予定調和の安心感。サプライズを仕掛ける人たちとは、正反対の位置にいる存在だ。

ただ、どうもそういった対立概念だけでは説明がつかない。

 

現代美術やSF映画で、すぐには理解できない作品に出会ったとき、まず「なんだこれは」という驚きがくる。
にもかかわらず、あるいはむしろそのおかげで、ふっと救われたような感覚を覚える瞬間がある。

自分の常識や言葉が届かない領域を提示されることで、癒されることもあるのだ。

それは、予定調和的な「癒し系」とは別種の、認知のストレッチのような癒しなのかもしれない。

 

たとえモチーフが暴力的であったり、不協和なノイズだったとしても、それがどのような文脈や美学の流れの上にあるのかを感じ取れるとき、その作品は「理解不能な脅威」ではなくなり、こちら側から引き受けられる余地が生まれる。

まさにその変化が起きる瞬間に、ある種の癒しが生まれていると感じる。