サックス奏者にとって、身体は「楽器の一部」。
最近体格と音の関係について考えることがあった。
今回はその話の続きでついでに少し文学の話も。
小柄さにコンプレックスを抱くというのは、遠い昔からあった悩みだと思う。
いや、コンプレックスどころの話ではない場合もあったはず。
マンモスに一撃でやられるとか。

もしもマンモス時代に生まれていたら
この悩みを抱えていた人物に、作家・三島由紀夫がいる。
彼の著作『太陽と鉄』は、言葉と身体、精神と行動をどう結びつけるかをテーマとしている。
小柄さに強いコンプレックスを持った三島が、いかにそれを克服して「文武両道」を体現するか、徹底的に掘り下げた批評的な作品だ。
三島はコンプレックスを「欠点」から「美学」へと変換した稀有な存在で、それは、体格がもたらした特別な運命だったと思う。
現代は医学やトレーニング理論が発達し、この種の悩みに対しては立ち向かいやすくなったし、自分もその恩恵を受けてきた。
しかし、楽になったのは良いとして、三島の意思力と比べると、自分の芸に対する切実さがいかにも足りない気がしてくる。
三島の最期は過激すぎて再現不可能だ。
でもその生き様は、演奏家としての自分の姿を省みるきっかけになる。
つづく