6月から指揮・指導者として関わらせていただいている「ムジカウィンドオーケストラ」の、1年の集大成となる定期演奏会が無事終演した。
ムジカウィンドオーケストラは、今年2月に逝去された堀江裕介さんが長年にわたり指揮を務め、音楽づくりに尽力されてきた愛好家による吹奏楽団。
堀江さんの残した音楽の軌跡は、いまもあらゆるところに息づいている。
この楽団もまた、その歩みの中に確かに刻まれてきたひとつの場所だ。
団員の方々と堀江さんの思い出を語るとき、音楽業界の中の堀江さんの印象とも少し違う、人間味に触れることがある。
この場所に流れている空気の中に、堀江さんが築いた“音楽の居場所”が、今も生き続けているように感じた。
堀江さんが近年よく口にしていた「リベラルアーツ」という言葉が、今になって胸に響く。
それは、音楽を仕事としてではなく、遊び、人生の糧として味わう人たちへのまなざしでもあったのだろう。
本番の舞台で放たれるムジカウィンドの輝かしい響きには、自由に音楽を楽しむ精神が息づいている。
その姿こそ、堀江さんの語っていた「リベラルアーツ」の体現そのものだと思う。
無免許運転そのものの自分の指揮についてきてくれた皆さんには感謝しかない。
指揮の楽しさ、喜びを本番で感じることができた。
このような感慨の残る演奏会というのは多くはなく、大切なことを思い出させてくれるようだった。
演奏会の中では、堀江さんの思い出も語られた。
今回OB・OGと合同で演奏した《エル・カミーノ・レアル》は、堀江さんがムジカウィンドの初の定期演奏会で取り上げた曲とのことで、記念的に選曲された。
当時の“無免許運転”だった堀江さんは、練習とはまるで違う超速テンポで振り始めたらしい。
そのエピソードはいまでも団員の語り草になっている。
そんな話を聞いてしまったからには——どこかでオマージュせねば・・という意識があった。
・前半は、その気持ちが通じたのか、皆さんの音にも火がついたような好戦的なテンポ。
・素晴らしいオーボエソロ。中間部を抜け、
・後半はやや落ち着いて始まったものの、ふと頭をよぎる。
「このまま終わっていいのか?」と。
そして、最後のヘミオラ以降——気持ちひとつで巻いてみた。
結果、若干拍を見失い、力技でゴールイン。
打ち上げでは案の定、「最後、振り間違えましたよね?」と鋭いツッコミ。
堀江さん笑ってくれますか。
2次会までしっかりお邪魔して、団員の方とたくさん話すことができ、幸せな時間だった。
もう少し余韻が続きそう。
